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グローバルサイトとは?目的と役割、英語サイトとの違いを解説

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プロフィールアイコン(写真):ディレクター 小島 寛人
小島 寛人ディレクター(ビジネス・アーキテクツ)

ローカライゼーションベンダーのディレクターを経て、2006年にビジネス・アーキテクツに入社。以来、大企業のコーポレートサイト、マーケティングサイト、保険企業のオンライン見積りサイトなど多様なプロジェクトに参画。

「これから我が社が海外に進出するためには、グローバルサイトくらい持っておかなければいけない!国際化の流れに乗り遅れないように、きちんと英語でWebサイトを作ろう!」
そのような鶴の一声でグローバルサイトを作ることになり、その担当者として白羽の矢が自分に立ったら、あなたはどうしますか?

「そもそもグローバルサイトってなんだろう?」
「会社にとってなんの役に立つんだろう?」
「担当者は何をすればいいんだろう?」

グローバルサイト担当者になったその日から、さまざまな疑問や不安が浮かんで、それが一日中ずっと頭から離れずに毎日を過ごすことになるでしょう。

ここでは、いくつものグローバルサイトの構築を手掛けてきた弊社が、グローバルサイト担当者の方から多く寄せられる疑問や知っておくべき情報について、現場目線で整理してご紹介します。
プロジェクトのキックオフや制作会社選定の前にご一読いただき、活用ください。

グローバルサイトと英語サイトの大きな違い

「グローバルサイトってことは、今のWebサイトを英語にすればいいんだよね?それなら、まず翻訳会社に話を聞こう!」

グローバルサイト担当者の大多数の方が、最初にこう考えると思います。
たしかに、海外進出を果たしている大企業のほとんどが、英語で書かれたコーポレートサイトを持っていますよね。
しかし、その中の多くが、本当の意味でのグローバルサイトではないのが現状です。
すでに持っているコーポレートサイトを翻訳すれば、世界中の人がそれを読んで自社への理解を深めてくれるというわけではありません。

英語に訳しただけでは各国の消費者やビジネスパーソンにうまく伝わらない

例えば、このような経験をしたことはありませんか?

英語で書かれた文献や記事に書かれている内容を読むために、翻訳サイトやアプリで日本語に翻訳。
所々、誤訳があるテキストや単語からニュアンスをくみ取って、なんとなく全体の意味を理解して、わかった気になる。
しかし実際には、書き手の伝えたかったことや真意が正確に読み取れず、ミスコミュニケーションが発生してしまう……。

まさしく、これと同じような経験を日本企業のグローバルサイトを読んでいる多くの方が味わっています。
日本語で書かれたWebサイトのコンテンツをそのまま英語に翻訳しても、ネイティブスピーカーからすると、非常に読みづらいものになります。
日本語から英語に訳しただけのテキストは、彼らには「大変堅い、かしこまった文章」と捉えられ、読みづらく違和感があるという意見もあるようです。

そうすると、結果的にエンゲージメントの向上につながりませんよね。

実は、このような落とし穴はテキストだけではなく、Webサイトの情報設計やデザインにも隠れています。
例えば、注釈や補足情報が多いページ構成や、コーポレートカラー、装飾を多用するデザインは、必ずしも万国に受け入れられるものではありません。
そのような日本のお国柄が色濃く反映されたグローバルサイトでは、Webサイトを訪れる各国の消費者やビジネスパーソンと、円滑なコミュニケーションは図れません。

海外進出やグローバル戦略展開の旗振り役になる「本当のグローバルサイト」を作るには、レベルの高いネイティブのライターや、グローバルに受け入れられるデザインやトレンドを理解したデザイナーの力が必要です。
そうしたグローバルな視点を持った制作会社と協力することによって、各国の消費者やビジネスパーソンが、日本特有のドメスティックな違和感を覚えることなく、正しいコンテンツの内容を伝えることができます。
これが、単なる英語サイトとの大きな違いです。

並び順や地図、記号の使い方も国によって異なる

過去、弊社が手掛けた例を紹介します。

とある食品会社様では、関連企業の一覧ページを用意していました。日本語サイトでは社名をひらがなの五十音順で並べていたのですが、それをそのまま英語に翻訳すると、海外の人は「いったい、どのような基準で並んでいるんだ?」と混乱してしまいます。
この場合、表記を英語に変えた時点で、五十音順ではなくアルファベット順の並び方に変更するべきなのです。

また、並び順だけでなく、関連企業の所在地を示す世界地図にも変更が必要です。私たちが普段よく見ている世界地図は、日本を中心に置くことが多いですが、それはあくまでも日本人向けの地図。世界的にはイギリスを中心に置く世界地図がスタンダードなのです。グローバルサイトなのに日本を中心とした世界地図のままでは、見る人に違和感を抱かせてしまいます。

見逃しやすいところでは、記号の使い方にも注意が必要です。例えば日本では、「◯」を「該当する」や「良い」という意味で使い、「×」は「該当しない」や「良くない」という意味で使います。一覧表に「◯」と「×」が記入されていたら、私たちは違和感なく意味を理解できるでしょう。

しかし、グローバルでは、該当する・良いは「◯」ではなく「チェックマーク」、該当しない・良くないは「×」ではなく「ブランク」や「-(ハイフン)」で表現することが多くあります。さらに、注釈で用いる「※」も日本固有の表現で、グローバルでは「*(アスタリスク)」を用います。

国によって、Webサイトを見る人の「普通」は異なります。グローバルサイトを制作する際には、日本語を単に英語に翻訳するだけでなく、このような点にも注意する必要があるのです。

グローバルサイトと翻訳サイトの大きな違いとは?:例1 サイト一覧ページ図:翻訳サイトは五十音順の並び、グローバルサイトはアルファベット順。例2 世界地図:翻訳サイトは日本が中心の地図、グローバルサイトはイギリスが中心の地図。

グローバルサイトの目的

グローバルサイトに限ったことではありませんが、プロジェクトを進める上で大切なことは、「(プロジェクトの)目的を明確にして、メンバー全員で共有すること」です。
ここでいうメンバーは、プロジェクト担当者だけではなく、他部署のスタッフや制作会社なども含んだ「プロジェクトに関係するすべての人」を指しています。

特に、グローバルサイト担当者が陥りやすいのが、当初の目的を見失い、「グローバルサイトの完成」を目的にしてしまうことです。

「企業としてあるべき理想の姿を目指すことや課題解決が目的であり、それを実現するツールとしてグローバルサイトを作る」という、一番の目的を忘れないことが大切です。
当たり前のことのように聞こえますが、さまざまな作業やタスクを進めていくうちに、この目的意識が薄らいでしまうケースが多く見受けられます。

では、グローバルサイトを作る多くの企業は、どのような目的を掲げているのでしょうか?

やはり一番よく聞くのは、「自社のブランド価値を海外にも伝えたい=グローバルブランディングをしたい」という声。
その経緯はさまざまです。

グローバルサイト制作の経緯

  • 企業の方針や事業内容が大きな転換を迎え、それをグローバル規模で発信したい
  • 主要事業がBtoBからBtoCに変わり、ウェブ上で消費者とのコミュニケーションを図りたい
  • 海外事業や現地企業を買収したので、ガバナンスを統一したい
  • 海外への事業拡大を目指して、自社プロモーションをしたい

共通しているのは、「企業や事業の転換期を迎えたタイミングで、国外向けの情報発信の整備をしたい」という目的意識を持っていることです。
このグローバルブランディングという目的を達成するために、グローバルサイトを活用したいと考える企業が多いですね。

グローバルブランディングとは何か

グローバルブランディングは、よくローカルマーケティングと混同されがちですが、まったく別物です。ローカルマーケティングとは、各国で行う独自のマーケティングのことで、現地の事情に明るい現地法人が担当します。グローバルブランディングは特定の国や地域に限定せず、企業が大事にしているメッセージなどをグローバルで発信することをいいます。

例えば、世界中で販売している商品があるとしましょう。パッケージデザインや広告の打ち方などは国ごとに最適な方法を採るべきです。これは、ローカルマーケティングに相当します。
一方で、「商品を開発した背景や想い」を伝える場合、国や地域でメッセージの中身は変わりません。むしろ、国によって違うことを言っているよりは、グローバルで統一されていたほうが商品に一貫性と説得力が生まれます。このような情報発信を担うのが、グローバルブランディングです。

とある精密機器メーカー様では、コロナ禍に対するメッセージをグローバルサイトに掲載しました。テレビCMでメッセージを伝える案もあったそうですが、今後、いつでも見られるようにするために、テレビCMではなくグローバルサイトにメッセージを掲載することを決めました。

会社として全世界に発信したいメッセージをグローバルサイトに載せることが、グローバルブランディングにつながるのです。

グローバルサイトの役割

グローバルサイトが果たす役割は、グローバルブランディングだけではありません。企業として最上位に位置するグローバルサイトを作ることで、そこから紐づく関連サイトが機能しやすくなります。

グローバルサイトと関連サイトの立ち位置を確認してみましょう。

組織図 : グローバルサイトが最上位。その下にリージョナルサイト、カントローサイト、ローカルサイト(カンパニーサイト)、マイクロサイトが続く

企業にとって最上位のWebサイトとなるのが「グローバルサイト」です。世界中のステークホルダーに向けてコミュニケーションをとるためのWebサイトであり、特定の国や地域に限定せず情報を発信します。また、各国サイトへのゲートウェイとしての役割も持っています。

「リージョナルサイト」は、グローバルサイトの一層下に位置づけられるWebサイトです。アジアや欧州といったリージョンレベルでのコミュニケーションをとる場合に必要となります。

そこから、各国の「カントリーサイト」、さらに小さなローカルマーケットに対してコミュニケーションをとる「ローカルサイト」、そして採用サイトや製品のブランドサイトなど、より小さな単位でコミュニケーションをとる「マイクロサイト」などがあります。

グローバルサイトは、世界中に向けて情報を発信する、いわば総本山です。現地法人がリージョナルサイトやカントリーサイトなどを制作する際に、お手本となる存在でもあります。
グローバルサイトがあることで、それ以外のWebサイトの役割が明確になり、現地法人が自分たちのやるべきローカルマーケティングに注力できるというメリットも生まれます。

現地法人の担当者の中には、Webサイト運用に関するスキルや経験がない方もいらっしゃいます。担当者のスキルに依存せず更新しやすくするためにはCMSの導入がおススメです。

エンタープライズCMSとはどんなCMS?ブログ系CMSとの違いを紹介 | BAsixs(ベーシックス)

CMS導入を検討中の方は、ぜひ比較表をご活用ください。

グローバル企業や、複数人・複数部署でサイト更新する担当者におすすめのCMS比較表2022 | BAsixs(ベーシックス)

各現地法人にコンテンツをシェアできる

グローバルサイトでは、基本情報や事業紹介はもちろん、社史や製品情報、ニュース、CSR活動(環境保護活動や社会貢献活動など)など、企業に関するありとあらゆる情報をまとめて発信します。
もちろんそれらは、消費者や投資家、ビジネスパーソンなど、さまざまなステークホルダーに向けられたコンテンツですが、そこには海外グループ企業や現地法人も含まれています。

最近では、本社主導で整備したグローバルコンテンツを、効率良く、正確に(ガイドラインなどを策定して)ローカルに落とし込むことが、ガバナンスの効いたグローバルブランディングを図る上で非常に重要だと考えられています。

なぜなら、このようなコンテンツシェアには、本社にとっても現地法人にとっても、多大なメリットがあるからです。

コンテンツをシェアするメリット

  • 本社の情報や方針など、ローカルに依存しないコンテンツをグローバルサイトでシェアすることで、現地法人ごとに異なる情報が発信されるリスクを回避でき、グループサイト全体で正しい情報に統一できる
  • 今まで現地法人ごとに作っていたコンテンツを制作する必要がなくなることで、人的リソースやコストを軽減できる
  • ローカルサイトを持っていなかった現地法人でも、コンテンツシェアによって効率的にWebサイトを用意できる

これまでのグローバルブランディングでは、本社の情報をグローバル規模で発信していくことばかりが最重要課題とされてきました。
しかし、多くの企業がグローバルサイトを作ったにもかかわらず、各現地法人に浸透せず、ガバナンスの形成に悪戦苦闘しています。

そこで近年では、整備されたグローバルコンテンツをローカルにシェアすることで、各現地法人や消費者とのコミュニケーションを向上させる「グローバルからローカル」への「グローカル化」がトレンドとされています。

「◯◯という会社といえば、こうだよね」という企業のブランドイメージは、全世界で共通化されているべきです。例えば、CEOのメッセージが各国のWebサイトで違っていると、企業としての一貫性に欠ける印象を与えてしまいます。
企業の信用やブランドイメージに関わるようなコンテンツはしっかりと本社が予算をかけて制作し、本社からローカルにシェアしていくことが望ましいでしょう。

前述の精密機器メーカー様の場合は、商品の情報もグローバルサイトに掲載していました。これは少し珍しい例ですが、全世界で共通して販売できる商品であればグローバルサイトにまとめてしまっても構わないでしょう。
その分、現地法人の負担が軽減されるなどのメリットも生まれます。

海外グループ企業や現地法人とコンテンツをシェアする方法の1つに、デジタルアセット管理の活用があります。詳しくは次の記事をご覧ください。

AEMのアセット管理でWebガバナンスを強化しよう | BAsixs(ベーシックス)

グローバル規模の採用活動

企業規模や事業展開が拡大すればするほどグローバルな人材へのニーズが高まり、採用活動や人材の流動もよりグローバル化します。
そのため、採用活動もローカルに依存するのではなく、本社が音頭をとってグローバル規模で推進するべきだという意見が増えています。

グローバルサイトを通じて本社とリージョンが連携して採用活動を行うことで、以下のようなメリットがあるといわれています。

本社とリージョンが連携して採用活動を行うメリット

  • 一貫性のある採用活動の実現
  • 流動的な採用活動における機会損失の軽減
  • 企業情報や従業員インタビューなどの採用コンテンツの流用

このように、グローバルサイトは単なるブランディングツールとしてだけでなく、各現地法人の業務負担の軽減やグループガバナンスの形成、グローバル人材の獲得など、さまざまな役割を果たしています。

まとめ

今回はグローバルサイトについて、翻訳サイトとの違いや目的・役割についてお話ししました。

グローバルサイトと英語サイトは同じではありません。日本語のWebサイトをそのまま英語に翻訳しただけでは、ネイティブスピーカーに違和感を与えてしまい、エンゲージメントの向上につながらないケースがあります。グローバルサイトは、レベルの高いネイティブのライターや、グローバルに受け入れられるデザインやトレンドを理解したデザイナーが制作するのが理想です。

グローバルサイトを制作する一番の目的は、自社のブランド価値を海外に伝えるグローバルブランディングです。グローバルサイトは単なるブランディングツールとしてだけでなく、現地法人の業務負担の軽減やグループガバナンスの形成、グローバル人材の獲得など、さまざまな役割を果たします。グローバルサイトは、地域や国のWebサイトが効率良く機能するために必要な存在なのです。

別の記事で、グローバルサイトを制作・構築する前に知っておきたいポイントを紹介しています。ぜひ参考にしてください。

グローバルサイトの制作会社はどう選ぶ?構築前の準備と確認ポイント | BAsixs(ベーシックス)

また、グローバルサイトを運用する上でよくある課題と具体的な解決方法については、次の記事で紹介しています。

AEM (Adobe Experience Manager) 導入で解決するグローバルサイトの課題 | BAsixs(ベーシックス)