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今回はグローバルサイト制作における課題と、その解決策についてお話します。

そもそもグローバルサイト制作には膨大な決め事やタスクがあり、さらにそれを社内や各国ウェブマスターに説明して了承を得る必要があります。
有り体に言えば、グローバルサイト制作は非常に難易度が高いプロジェクトです。
グローバルサイトの公開までに様々な障壁や課題があり、さらにそれをローカルに落とし込むためには各国のウェブマスターに協力を仰ぎ、時には時間とコストをかけて体制を整える必要があるからです。
現に、世の中には日の目を見なかったグローバルサイトや頓挫したグローバルプロジェクトが多く存在しています。
では具体的に、グローバルサイト担当者はどのような課題に直面するのでしょうか?

前回の記事: グローバルサイトの目的と役割 〜英語サイトとはどう違うの?〜

 

目次

制作会社・上長・経営層・他部署とのコミュニケーションエラー(課題感の違い)

担当者から一番多く寄せられる課題は「社内やグループ内でコミュニケーションエラーが発生してしまう」というお悩みです。

確かにグローバルサイトに掲載される会社方針やブランドイメージなどは、長い会社経営の中で様々な立場のスタッフが関わり合って形成されています。
ただし、その中には現地法人の抱える課題や問題が本社へ正しくエスカレーションされていないと感じる方も多いようです。
そのような状態で会社の方針やブランドイメージなどを、経営陣や上長、他部署のスタッフなど関係者全員が納得する形に取りまとめ、各現地法人に正確にシェアするというのは至難の業です。

どうしてもコンテンツリーダーや特定の役職者の意見や要望が反映され、属人的なコンテンツやデザインが乱立し、それが間違った形でグループ会社や関連企業に展開されることによって、ガバナンスの低下を招いてしまうことが多々見受けられます。
そうしてガバナンスが効かなくなると、会社のビジョンやCEOメッセージなど、本来は統一されるべき情報が各国で異なる、という状況を招いてしまいます。
心機一転して作るグローバルサイトがそれらと同じ轍を踏まないように、担当者は事前に

  • 各国のウェブマスターが抱えている課題の吸い上げ。
  • コンテンツシェアのルール決め。
  • 公開後の運用体制の想定。

をしておく必要があるのです。
そのための施策をご紹介します。

グローバルサイト運用において、社内やグループ内でコミュニケーションエラーが発生してしまうケース

ビジネス・アーキテクツが行なっているウェブサイト担当者への支援方法

グローバルサイト制作後、そのデザインやコンテンツを正確に効率よく各現地法人に浸透させる重要性は前回お話した通りです。

前回の記事: グローバルサイトの目的と役割 〜英語サイトとはどう違うの?〜

ですが単なるトップダウンで各現地法人に通達するだけでは、各国のウェブマスターが皆揃って協力してくれるとは限りません。
なぜなら各現地法人がすでに持っているウェブサイトの改修にも人的リソースやコスト、時間が必要だからです。
場合によっては大規模なリニューアルが必要であったり、そもそもリージョナルサイトを持たない現地法人は0からウェブサイトを構築しなければいけないですよね。
担当者はそんな各現地法人の実情をきちんと理解した上で、各国のウェブマスターと協力体制を組み、ガバナンス形成を推進する必要があるのです。
例えばビジネス・アーキテクツでは、様々な方法・アプローチで担当者を支援しています。

各国のウェブマスターへのアンケート実施

グローバルサイト制作の初期フェーズに、各国のウェブマスターを対象に現状のサイト運営の課題や本社への要望などをヒアリングするために、アンケート調査を実施します。
調査結果を基にグローバルサイト設計をすることで、各現地法人にとってもメリットのあるコンテンツを提供することができます。

ちなみによく聞くウェブマスターの声としては「最新の企業情報や会社メッセージを共有して欲しい」「更新の負担が大きいので、ローカルでも流用できるコンテンツをシェアして欲しい」などが多いですね。

ガイドラインの策定

別の記事でも詳しく説明しますが、現地法人でのサイトリニューアルやコンテンツ追加をサポートするためにガイドライン(ウェブサイトの説明書やパーツをまとめたもの)を準備します。
各国のウェブマスターがお抱えの制作会社に提供できるように、画像やテキストはもちろん、ブランドロゴデータやコンポーネントと呼ばれるウェブサイトのパーツを共有します。
これがあることで、ウェブマスターが都度都度本社に確認を取る手間が省けたり、間違った情報が掲載されたりするリスクを回避することができます。

またこれまで各国のウェブマスターが作っていた(リージョンに依存しない)コンテンツの制作が不要になり、その分のリソースや予算を他に回せますよね!

ウェブマスターの業務負担を解消して、メリットを実感させることが出来れば、グローバルサイトプロジェクトへの理解も得られやすくなります。

【制作事例】味の素グローバルサイト

味の素グループの企業や現地法人への展開を想定して、ユーザビリティや更新性を向上させるデザイン設計をおこないました。デザインテンプレートと合わせてコンポーネント(モジュール)設計を行い、今後の展開を目指しています。

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運用体制の構築

運用体制を構築する際に一番大切なことは、グローバルサイト運営の主体を決めることです。
これはおよそ3つのパターンに分けられます。

グローバルサイトの運用体制

本社主体の運用

グループサイト全体で共通のコンテンツを発信する本社が一元管理をする体制が、一番効率的だと考えられています。
更新権限を本社の一部のスタッフに限定することで、一貫性のあるサイト運営が実現できます。

 

ただ一方で、どうしても各現地法人との距離が生じるため、本社のウェブ担当者が現地法人のニーズや課題をキャッチしてグローバルサイトに反映させる細やかな配慮が必要です。
またリージョンに依存するコンテンツの企画制作や限定的に展開されている商品情報など、一部の更新作業をウェブマスターに全権委託するような分業制を取り入れる場合もあります。

リージョン主体の運用

各国のウェブマスターたちにグローバルサイトの更新を任せている企業はごく少数です。
各現地法人のニーズや市場の特徴が反映されたコンテンツが増え、消費者とのコミュニケーションは活発化されると考えられます。

しかしそれぞれの意志やモチベーションの異なるウェブマスターたちが更新していくことで、一貫性のないコンテンツが乱立したりガバナンスの効かない状況に陥るデメリットと表裏一体のサイト運営になります。

そのため、本社のウェブ担当者が細かく運営ルールを定めたり、チェック担当や承認体制を用意する必要があります。

アウトソーシング

ウェブ制作会社や広告代理店にグローバルサイトの運用を全て任せる方法もあります。
やはり専門家に委託することで、更新や改修をスムーズに手間をかけずにできるのが一番のメリットです。
委託するコストはかかりますが、各現地法人のウェブマスターとのコミュニケーションもサポートしてもらえるのは心強いですよね。
ただどんなに業務を委託しても社外の体制に過ぎないので、本社のウェブ担当者が該当部署と制作会社との間に立つ必要があります。

以上、3パターンの運用体制をご紹介しました。
企業の方針や事業構造を考慮して柔軟な運用体制をチョイスすることが担当者には求められます。
公開後の運用体制はサイト構築にも影響を及ぼすので、先を見据えて判断をしましょう。

ドメインの整備

「現在使用していないものも含めて、関連ドメインのリストをいただけますか?」
※ドメイン:URLのwww.以降の部分を指します。

ドメイン

おそらくグローバルサイト担当者のほとんどが、制作会社選定の際に制作会社から尋ねられると思います。
これはグローバルサイトのURLを決めたり、グループ会社や関連企業のURLを確認するためです。
(おそらく広報部や知財部などの部署が管理している場合が多いので、まずは社内で確認してみましょう。)

グローバルサイトのドメインですが、一般的にトップドメインとされている.comを用いることがほとんどです。
既にコーポレートサイトやブランドサイトで.comを使用している場合は、そのサイトの担当者の協力を仰げればスムーズに移管(ドメインを変更すること)ができるかと思います。

しかしグローバルサイトで使用したい.comドメインを現地法人やグループ企業が使用している場合は、ウェブマスターにグローバルサイトプロジェクトへの理解を得て、ドメインを譲渡してもらう必要があります。
(ちなみに.comドメインが自社とは全く関係がない別会社やブランドで使用されている場合もありますので、まず社内で.comドメインの所在を調べましょう)

ただ、現地法人やグループ企業からすると、今まで運営してきたウェブサイトのURLを変更するというのは、そう小さくないリスクです。
例えば、検索順位に影響が出たり、既存ユーザーの混乱を招く恐れがあります。

またパンフレットや商品パッケージにURLが記載されている場合もあるので、リダイレクト設定(変更前のURLにアクセスしても自動で正しいページへ移動させる設定のこと)も必要になります。

担当者の最大のタスクは、グローバルサイト制作が現地法人やグループ企業にとっても有益であることを伝え、リダイレクト設定などを行い、彼らの不安や負担を軽減させてあげることです。
ただ単に関連ドメインを請求するだけの制作会社ではなく、ドメイン整備の支援を行ってくれる心強い制作会社を味方につけましょう!

CMSの導入

CMSとはContents Management Systemの略で、HTMLやCSSのような専門知識を用いずに、ブログ形式で画像やテキストを入力するだけでサイト構築ができるシステムのことです。
サイトの運用や更新が誰でも簡単に直感的に行えるため、Word PressやbaserCMSといったCMSが世界中で使われています。

ですがCMSをグローバルサイトやローカルサイトを対象に大規模に導入すると、ライセンスフィーだけで数千万円以上の費用が毎年かかる場合もあります。
そのため導入のハードルが高く、社内で予算を取るのも一苦労です。

しかし、それにもかかわらず世界中の企業がCMSを導入している理由は、コスト以上に次のようなメリットがあるからです。

  • ウェブサイトのデザインやレイアウトの品質が標準化される。
  • URLやファイル名を変更した際にリンク切れが発生しない。
  • ページの追加や更新、コンテンツの拡充が簡易化される。
  • 社内での更新作業が可能になり、コスト削減と納期短縮化を実現できる。

グローバルサイト公開後、運用を内製化していくのであれば、CMS導入の検討は必要かと思います。
担当者としてやるべきことは、CMS導入費用やメリットを社内に説明して、導入しない場合の運用コストや作業負担を天秤に掛けて検討することですね。
グローバルサイト運営の長期的なビジョンを社内に共有しましょう!

制作期間

担当者によく尋ねられるのが「グローバルサイトの制作って、どれくらいかかるんですか?」との疑問。
ここまでお話してきた通り、もちろんグローバルサイトは作って終わり、ではありません。
ここではフェーズごとに、その内容と目安の期間をまとめていきます。

グローバルサイト戦略・中長期計画立案

制作に入る前に、企業としてグローバルサイトをどのように活用していくかの戦略を、中〜長期で計画します。
グローバルサイト公開後に、どのようにグループ企業や現地法人などの各サイトに展開していくのか、どのようにコンテンツや機能を追加していくのか方針を固めます。
会社の規模や部署の数にもよりますが、3ヶ月〜半年ほどかけて社内での合意をとります。

グローバルサイト構築

次は実際に、選定した制作会社と二人三脚でグローバルサイトを制作していきます。
機能やデザイン、ページ構成、コンテンツなど上長や関係部署に確認をとりながら公開を目指します。

ここできちんと社内の承認者を押さえておかないと、完成直前に大幅な修正が入ったり、公開スケジュールが後ろ倒しになったり、予算を超えるコストがかかってしまう場合があります。
前のフェーズで社内合意を得た戦略や計画からブレないように、土台となるグローバルサイトの構築・公開を1年〜2年かけて達成します。

グループ企業や現地法人サイトへの展開

やっとの思いで公開したグローバルサイトのコンテンツやデザインを、今度は関連する各ウェブサイトへ展開します。

ここで大切なのが、デザインルールやコンテンツについて、何を・いつまでに・どのように・どこまで遵守するのかを取り決めるガイドラインの策定です。
各現地法人の作業コストを抑えつつ、正確な情報を展開していくためには、このガイドラインを各国に適用してもらえるよう協力を仰ぐ必要があります。
ここも関連会社の数や事業規模によりますが、順次展開していくには2〜3年を要します。

コンテンツや機能の追加

グローバルサイトが完成してウェブ上に公開された後にも、事業構造や主力製品、組織体系など企業は目まぐるしく変容します。
その度にグローバルサイトに掲載している情報やコンテンツを更新・改修することになります。
場合によっては、経営陣や関連部署の要望を叶えるために機能を増やしたり追加開発を余儀なくされることもあります。

その都度、制作会社と連携してグローバルサイトをアップデートして、訪問するユーザーが必要な情報を正確に入手できるよう運用しましょう。
このフェーズには終わりや期限はなく、恒久的に続いていきます。

グローバルサイトの整備ステップ

まとめ

今回はグローバルサイト制作における課題と解決策についてお話しました。

  • コミュニケーションエラーによるガバナンスの機能低下を防ぐために、担当者はアンケートの実施やガイドラインの策定、運用体制の構築に取り組む必要がある。
  • グローバルサイトでトップドメインを使用するために、関連するドメインを整理して、トップドメインを使用している担当者に協力を仰ぐ。
  • CMS導入費用やメリットを社内に説明して、導入しない場合の運用コストや作業負担を天秤に掛けてCMS導入の可否を検討する。
  • グローバルサイトは公開して終わりではなく、時間をかけて各国のウェブサイトに展開していき、恒久的に更新と改修を続けていく。

次回は各国向けガイドラインの策定について取り上げます!

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小島 寛人

小島 寛人

ローカライゼーションベンダーのディレクターを経て、2006年にビジネス・アーキテクツに入社。以来、大企業のコーポレートサイト、マーケティングサイト、保険企業のオンライン見積りサイトなど多様なプロジェクトに参画。 現在はビジネス・アーキテクツ営業/ディレクションUNITの責任者を務める。 [主な実績]富士フイルム グローバルプロジェクト、デンソーグローバルプロジェクト、シトロエン公式サイト構築、味の素グローバルサイト構築

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